前立腺肥大症 前立腺肥大症

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DISEASE

前立腺肥大症

男性の皆様このような異常や違和感はありませんか?

  • おしっこの勢いが弱くなった
  • おしっこしたいのに、尿が出ずらい
  • おしっこの途中で、尿が途切れてしまうことがある
  • 力まないとおしっこができない
  • おしっこの切れが悪くなった
  • トイレに立つ頻度が増えた
  • 耐えきれない尿意に襲われることがある
  • 夜間によくトイレに起きる
  • 間に合わずに、尿がもれてしまう
  • 下着を尿で汚してしまう
  • など

このような症状の方は、前立腺と呼ばれる男性特有の生殖器官が肥大して尿道や膀胱を圧迫している可能性があります。症状が進行してしまうと、尿が全く出なくなる「尿閉」と呼ばれるような状態に陥ってしまうかもしれません。

稀に前立腺癌が進行した際にも上記のような症状が現れることがありますが、近年では検査が進み早期発見されるようになり、適切な治療が行われるため滅多にここまで進行することは減ってきました。

前立腺肥大症

前立腺の位置

前立腺の内腺の肥大による物理的な前立腺部尿道の圧排により、尿道が狭くなり尿勢が低下したり、尿線が途絶する、いきまないと出ないなどの状態を機械的閉塞と言います。この状態が長く続くと、排尿のたびに膀胱にストレスがかかるため、炎症性サイトカインや酸化ストレスが加わり、二次的に膀胱が尿意に対して敏感になり、過活動膀胱となってしまいます。また、排尿筋が線維化を起こして、肉注形成をきたし、膀胱が固くなり、柔軟性に乏しい(コンプランスの低下を招く)膀胱と化します。徐々に、膀胱が伸展しにくく、収縮しづらい状態に変化していきます。
また、前立腺肥大症にはもう一つの概念である、機能的閉塞もあります。これは、前者と異なり、前立腺のサイズが大きくなくても起こり得る現象で、前立腺部尿道に存在するα-1受容体の過緊張により、尿道が収縮して狭くなることで閉塞起点となり、排尿困難に陥る状態です。
結果としては機械的閉塞と同様の状況に陥ります。
前立腺肥大症には機械的閉塞と機能的閉塞の2つの概念があるということです。よく、なんで前立腺が大きくないのに前立腺肥大症の薬が処方されているんだ?と疑問を持たれた方、上述のような理由があったわけです。


進行フェーズとしては3段階存在します。

① 第一段階:膀胱を刺激してしまう
トイレに頻繁に行く・尿勢の低下・頻尿などがこの段階で見られる主な症状です。これらは、前立腺肥大症の最初の症状で、肥大し始めた前立腺が膀胱や尿道に干渉することで刺激を与えてしまうことにより発生します。

②第二段階:残尿の症状が発生する
排尿時に力まないと出なくなった・おしっこの切れが悪くなった・おしっこの途中で尿が途切れてしまうなどがこの段階で見られる主な症状です。これらは、前立腺が肥大してしまうことで尿道が圧迫されて狭くなってしまうため発生します。残尿感が強まるのが第二段階です。

③第三段階:慢性的な閉塞症状
トイレに立つ回数が明らかに多くなった・一回にかかる排尿時間が分単位で長くなったなどがこの段階の症状です。いわゆる「頻尿」の症状ですが、ここまで進行すると最悪の場合尿が出なくなってしまうという状態に陥る可能性も存在します。(尿閉と呼ばれる、膀胱に尿が溜まっていても出せない状態)

また、患者数としては、50歳以上の男性では5人に1人が前立腺肥大症になっているといわれています。ここから考えると、日本の50歳以上の男性は約2,400万人程度です。つまり、統計上は約480万人が患者さんということになっている計算です。厚生局の調べによると、大体39万人程度という発表ですが、9割以上は気付いていない、または症状がひどくないために我慢している可能性が非常に高いということになります。
(構成統計協会 患者調査 2002年より)

前立腺肥大症が起きる原因

前立腺肥大症が発症する原因は現状完全に解明されているわけではありません。男性ホルモンの性ホルモンの状態・加齢・生活習慣(高血圧・肥満・高血糖・脂質異常)・遺伝などが挙げられますが、もっとも起因してるのは加齢であると考えられています。

~前立腺肥大になりやすい傾向~
50歳以上から急激に前立腺肥大症は増え始めます。医学的には、30歳から始まり歳を重ねるごとに発症の可能性が増えます。しかし、排尿障害を起こし治療が必要な肥大症はそのうちの4分の1程度と言われています。

加齢によって、どうして肥大するかというと、「男性ホルモン」のバランスが加齢により変化(増減)することによって、肥大をしてしまうと考えられています。しかし繰り返しになりますが、はっきりとした因果関係は解明されていません。
実際の例を挙げてみると、夜尿症で来院されてくる小児のお子さんは、だいたい小学校低学年から高学年ぐらいが多いですが、超音波上前立腺サイズを計測してみると約1-2ml前後が多いです。よって、加齢性変化(男性ホルモンの影響)によって、年々増大傾向をきたした結果、20ml以上に到達するのがだいたい50歳前後で、そのころから前立腺肥大症が出現してきます。前立腺の肥大は長年かけて形成された年輪、樹齢と考えていただくと分かりやすいのではないでしょうか。そして、男性の前立腺肥大は女性の子宮筋腫に相当するものです。しかし、決定的な違いは男性には閉経が無いことです。よく女性の場合は子宮筋腫があっても、すぐに手術はせずに閉経を迎えたら、女性ホルモンの供給が途絶えるので、経過観察をすることが多いと思います。しかし、男性には閉経がないため、睾丸を摘除しない限り一生、墓場に入る前日まで男性ホルモンは出続けます。よって、前立腺の肥大は大きくなり続けることはあっても、小さくなることはほぼありません。前立腺肥大症による排尿障害は一生うまく付き合っていくものであり、治療方法はあくまで対症療法であり、根治療法ではないのはこういった理由があったわけです。

前立腺肥大症の検査

主に下記のような検査を実施いたします。

<自覚症状の評価>
国際基準として世界共通で用いられている「前立腺症状スコア」にご回答いただきます。この点数によって、どの程度の症状度合いなのかを定量的に測定することが可能になります。当院ではWEB問診のため、簡単にご回答いただけます。

<超音波(エコー)検査>
お腹に超音波を当てることで、前立腺の肥大具合を確認します。下腹部部分にエコー機器を押し当てることで、正確に前立腺の大きさを評価することができます。
(前立腺のみならず、尿路に関連した様々な疾患のスクリーニング検査として活用されています。)
<直腸内指診>
肛門から直腸に指を入れ、直腸の粘膜越しに前立腺に触れることで、前立腺の形状や硬さ、痛みがあるかどうかをチェックします。前立腺で炎症が起きていれば押すと痛みを感じ、前立腺癌がある場合は硬い腫瘤を確認できます。直腸診は直接確認することで、前立腺肥大以外の疾患のチェックにも役立ちます。

<尿検査>
尿に血が混ざっていないか(顕微鏡的血尿)、尿が濁っていないか、異常に尿に物資がまざってしまっていないか、を確認する検査です。遠心分離機にかけた場合は、顕微鏡により医師が直接観察するので、異常を見逃す可能性が低い検査です。

<尿流量測定>
特定の装置がついたトイレで通常通りに排尿をしていただくと、尿の排出状況がグラフで表示されます。これによって、
・排尿の勢い
・排尿している量
・どれくらいの時間排尿しているのか
・排尿が開始するまでの時間(ためらい時間)
というような情報が自動的に集計されます。これにより、実際に起きている排尿状態を確認できます。

<残尿測定>
排尿した後に膀胱内部にどの程度尿が残っているか確認します。下腹部の膀胱にエコー検査機器を押し当てて超音波により確認します。排尿障害が起きていれば、尿を排出しきれていないというような状態が確認できます。
尿流量測定や残尿測定検査は、前立腺肥大症のみならず、過活動膀胱や神経因性膀胱など、機能的な評価をするうえでとても重要な検査で、鑑別診断に役立ちます。我々泌尿器科医は排尿障害において、もっとも重要視するのが、残尿量です。畜尿量や尿勢はQOLとしては重要ですが、残尿量が多いことはQOLの低下のみにとどまらず、腎機能障害や、尿路感染症を引き起こす医学的に無視できない状況です。ここを何とかするために薬物療法やカテーテル操作(自己導尿指導や膀胱内バルーンカテーテル留置、膀胱瘻カテーテル留置等)、手術療法等を検討していきます。

<PSA(前立腺特異抗原)測定>
PSAは前立腺で作られる糖タンパク質の一種で、血液採取を行う血液検査で血中のPSA濃度を測定することが可能です。前立腺癌があると、この濃度数値が異常を示します。正常値は4ng/ml以下となります。PSA>4ng/mlで一ケタ(<10ng/ml)をgray zone(グレーゾーン)と言って統計上約3割に前立腺癌が認められます。しかし、残り7割は前立腺癌以外の要因で、前立腺肥大(前立腺体積が大きい=腺組織が多く存在するため、分泌されるPSA(糖タンパク)が血中に多く分泌される)や(急性や慢性)前立腺炎、年齢、射精後などでも上昇してきます。gray zoneの場合は、上記のごとく前立腺癌以外でも上昇してくるため、1度の検査結果だけを鵜呑みにして、すぐに精査ではなく、一定期間をおいて再検し、その結果をもとにMRI検査や生検などの精密検査に移行します。早期発見は大前提ですが、生検のような侵襲ある検査をなるべく減らす努力をすることも一方で非常に重要です。この辺は、一般の診療科では判断が難しいため、まずはPSA高値の場合はお近くの泌尿器科へご相談することをお勧めします。

前立腺肥大症の治療方法

前立腺肥大症を治療するには、大きく3つの手法があります。合併症(尿閉・結石・腎機能障害など)によっては手術などの治療が必要になりますが、まずは薬物療法が実施されます。

~薬物治療~
① 前立腺肥大が起きている原因によって投与する薬が変わります。前立腺が収縮してしまうことで、尿道が圧迫されている場合は、前立腺(平滑筋)を緩めて尿道の圧迫を取り除く薬を使用します。(α-1遮断薬、PDE5阻害薬)
② 前立腺が物理的に大きくなることで尿道を圧迫して通りを悪くしている場合は、前立腺を縮小させるような薬を利用します。具体的には男性ホルモンによる前立腺への影響を抑えることになります。(5α還元酵素阻害薬)
③ 上記薬物でも畜尿症状(尿が貯められない、尿意を我慢できない(尿意切迫感)、尿意を我慢できずに失禁してしまう(切迫性尿失禁))が改善されない場合、残尿がないことをしっかり確認したうえで、過活動膀胱治療薬(抗コリン剤、β作動薬)を追加します。
~手術治療~
薬物治療を行っても、症状が改善されない場合や、外科的処置が必要な合併症が発生している場合は手術療法になります。基本経尿道的操作での手術になりますので、前立腺癌の手術とは異なり、前立腺を全摘するわけではなく、前立腺の被膜(外腺)を残して、内腺のみを切除または核出する術式になります。
※当院では、手術が必要になった場合は、適切な連携医療機関へご紹介いたします。

~保存療法(予防)~
生活習慣の改善や健康食品の摂取などが挙げられます。症状の緩和もそうですが、これはそのまま前立腺肥大症の予防につながります。
・水分の過剰摂取を控える(夜間頻尿でお困りの方は就寝前の飲水摂取は禁です。寝しなの飲水摂取は夜間多尿の原因となりこれが、夜間頻尿の増悪因子となります。寝しなの飲水摂取が脳梗塞や心筋梗塞等の心血管イベントを抑制するという医学的根拠はありません。)その分、日中の飲水摂取は励行とし、脱水にならない様、尿の色調に注意しながら、うすい色の尿を排出するよう水分調整してください。
・夕方以降のカフェインやアルコールの過剰摂取を控える。(カフェインは利尿効果、覚醒効果があるため、午前中からお昼過ぎぐらいまでの日中の活発に活動する場面においてはどんどん摂取していただいて構いません。しかし、夕方以降に摂取してしまうと、上記のごく、夜間多尿や睡眠障害を引き起こし、結果夜間頻尿をきたす原因となります。)
・刺激性食品(香辛料、柑橘類、アルコール等)の摂取を控える(尿中に排泄された刺激成分が膀胱粘膜を刺激して、畜尿障害をきたす原因となります)
・適度な運動(日中の運動によって、適度な疲労感をまねき、睡眠の質を良好にしてくれます。高齢者の睡眠障害の原因の一つに、日中の活動量の低下が挙げられます。)
・長時間座っていることを避ける(長時間の会陰部の圧迫により、骨盤底の血流障害をまねき、結果前立腺および周囲の酸化ストレスや酸欠状態を発症し、炎症性サイトカイン等が産生され、炎症を起こしやすくなります。結果前立腺および周囲組織のむくみが生じ、排尿障害、畜尿障害、前立腺炎症状(会陰部痛等)を発症する原因となります。
・下半身を冷やさない(これも血流障害の原因となります。特に夜間頻尿でお困りの方は寝しなに入浴をする、冬場は電気毛布や電気あんか、腹巻き、ももひき等の防寒対策が重要です。)
上記のような生活習慣の改善は症状緩和に繋がります。薬物療法はあくまで下部尿路症状(膀胱、前立腺にかかわる畜尿障害や排出障害)のみを改善するものであり、薬物療法以上に生活習慣を改善していく、行動療法こそが排尿障害における根本的な治療です。薬物療法と行動療法の両者を併用していくことで、QOLの向上が望めるといえるでしょう。前立腺肥大症と診断された方はもちろんのこと、年齢も40歳を超えている方は注意をしておくことで症状の悪化を防ぐことができる対策です。



■前立腺肥大症でお悩みの方は当院へご来院ください
当院は前立腺肥大症の診察・検査・治療を丁寧に対応しております。患者さん一人一人のライフスタイルに合わせた治療法や予防策の提案をさせていただきます。気になる症状・不安な違和感があればまずは当院で一度検査をしてみることをおススメいたします!

ご予約には24時間対応可能なWEB予約がお勧めです。
新患の方は下記URLから予約が可能です。
https://ssl.fdoc.jp/reserve/subjectlist/index/cid/x4545549?SITE_CODE=hp




文責
横浜市港北区綱島
すがわら泌尿器科・内科クリニック
院長:菅原 草