腎盂・尿管がん
こんな症状はありませんか?~進行した腎盂・尿管がんの自覚症状~
- 健康診断で尿潜血陽性と指摘された
- 肉眼で見える血尿が出ている
- 腰背部痛がある
- など
腎盂・尿管がんは早期の段階でなかなか症状が現れないことも多いのが特徴です。癌が進行してしまうことで、上記のような症状が現れてきます。腫瘍が増大し、尿管が少しずつ狭くなってしまうと、水腎症(腎盂から尿管にかけて拡張しまう状態で、尿路に閉塞基点が発生することにより、尿路内圧が上昇した結果である)を起こしてしまい、エコー・CT検査などで見つかることもあります。
腎盂と尿管の機能について触れて解説します。それぞれは、尿が通る管で膀胱に繋がっています。尿管はただの管としての役割ではなく、尿管壁の平滑筋の蠕動運動によって、圧力で尿を膀胱に送ります。(尿の流れは一方通行で、腎盂から尿管→膀胱へと順行性に流れています。)この腎盂と尿管は、膀胱と同じ尿路上皮という粘膜で内腔が覆われています。この粘膜に発生するがんを、尿路上皮がんといい、がんの発生する部位によって、腎盂がん・尿管がんと呼びます。ちなみに、腎がんとは発生母地が違うため、全く組織が違うがんです。
腎盂がんの発症確率は膀胱がんの20分の1程度であり、相当稀であることがわかっています。しかし、発症することで、前述したような水腎症などを引き起こしてしまうため、早急に対応する必要があるのです。
腎盂・尿管がんの発症原因
腎盂・尿管の位置
尿の中の発がん性物質と触れることが原因であると言われています。発がん性物質というと、タバコ(ニコチン)、石油、木炭、アスファルト、タール、鎮痛剤(フェナセチン)、抗がん剤(シクロホスファミド)、芳香族アミン類、慢性炎症(尿路結石、慢性細菌性感染)などが危険因子として挙げられます。
腎盂・尿管がんの検査・診断方法
【CT/MRI検査】
主に造影CTを選択することになります。腫瘍の大きさや性状、周りの臓器への広がりや転移の有無を確認します。CTウログラフィーによる尿路を強調した撮影方法も併用します。ヨードアレルギーがあって、造影剤を使用できない場合にはMRウログラフィーで代替することもあります。
【尿検査、尿細胞診検査】
血尿の判断を行って、尿細胞診検査でがん細胞の有無を判断します。尿細胞診はPapanicolaou染色を行い検査します。細胞診は細胞質と核の比率(N/C比)、細胞核の極性、細胞核小体の存在などを指標とします。判定はclassⅠ、Ⅱは陰性、classⅢは偽陽性、classⅣ、Ⅴは陽性で悪性細胞の存在を示唆します。
また、左右の尿管からカテーテルを挿入して、各々の尿路から別々に尿を採取する、分腎尿採取にて、尿細胞診検査を行うこともあります。
【腹部エコー検査】
被ばくなどの副作用を気にすること無く実施が可能な検査です。そのため人間ドックなどで臓器のスクリーニング検査(最初の検査)として広く行われています。腎盂内に存在する腫瘍や水腎症の有無を検査します。
【逆行性腎盂尿管造影:】
尿が排泄される出口に近い尿管口から細いカテーテルを入れ、造影剤を注入して病変を観察します。病変は陰影欠損(filling defect)として、描出されます。
【腎盂尿管鏡】
内視鏡で腎盂尿管を観察します。直接腫瘍を確認することが可能で、その際、腫瘍組織を採取(生検)してがんの病理検査を実施することができます。この検査の場合は、麻酔が必要となるため入院していただくことになります。
腎盂・尿管がんの治療方法
【腎尿管全摘除術】
基本、尿路上皮は腎盂→尿管→膀胱と一連に連続して覆われているので、腎盂癌なら腎摘のみ、尿管癌なら、尿管部分切除のみとはならず、両者ともに腎臓から尿管および膀胱も一部部分切除しなければなりません。そうしないと、残存した組織に再発するリスクをはらんでいるからです。
【腹腔鏡手術】
腫瘍が周囲に浸潤せず、癒着等がなく、またリンパ節転移等が画像診断上指摘されていない場合には、開腹手術よりも侵襲が少なく、第一選択となります。
【開腹手術】
経腹膜アプローチと後腹膜アプローチがありますが、腹腔鏡では根治的に摘除が困難な症例(周囲臓器への浸潤や所属リンパ節への転移を認めている、またはリンパ節廓清を要する場合など)には現在でも行われています。
【化学療法】
診断時に、すでに他臓器やリンパ節に転移が認められた場合、術前または術後に施行され、手術の根治性を高め、また術後の再発や転移のリスクを軽減させる目的で施行されます。
【放射線療法】
尿路上皮がんはあまり放射線が効果的ではありません。年齢や合併症などの要因で、根治手術が難しい方に、放射線療法が選択されることもあります。
疼痛緩和目的で行われることもあります。
当院へのご受診を検討されている方へ
当院は腎盂がん・尿管がんの可能性も考えた多角的な診察・検査を行っています。万が一の腎盂・尿管がんの可能性を、視野に入れながらの診察は泌尿器科専門医にしかできません。
必要であれば、すぐに適切な病院へご紹介ができるように、検査・治療にベストを尽くしております。気になる症状・不安な違和感があればまずは当院で一度検査をしてみることをおススメいたします!
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文責
横浜市港北区綱島
すがわら泌尿器科・内科クリニック
院長:菅原 草