嵌頓包茎は狭い包皮輪によって冠状溝で包皮が絞扼し、リンパ浮腫をきたすことで包皮がもとに戻らなくなる現象です。 嵌頓包茎は狭い包皮輪によって冠状溝で包皮が絞扼し、リンパ浮腫をきたすことで包皮がもとに戻らなくなる現象です。

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徒手整復できなかった嵌頓包茎に対し、緊急背面切開術を行った一例

数日前に包皮を無理に翻転してしまい、その後自力で元に戻せなくなり、痛みも伴って来たとの事で来院された10代の男児。包皮はエリマキトカゲの様に、亀頭に浮き輪をかぶせたような状態となっておりました。この状態は嵌頓包茎といって、普段は真性包茎で包皮が亀頭を覆っている状態なんですが、包皮輪(包皮の口径)が亀頭よりも狭いのに、何らかの要因で包皮を無理に翻転して亀頭直下の冠状溝まで達してしまうと、狭い包皮輪が冠状溝を絞扼してしまい、その後リンパ液の還流障害をきたしてリンパ浮腫を起こしてしまいます。早ければ早いほどリンパ浮腫の状態が軽いので、徒手整復(用手的に翻転した包皮をもとの状態に戻すこと)が可能になる確率が上がりますが、今回は数日経っており(私の経験上過去に1例のみ徒手整復できずに緊急背面切開した症例があるだけで、ほとんどが徒手整復可能なんですが)、今回はどうやっても戻せずやむなく局麻下に緊急背面切開術を施行する事となりました。


亀頭直下の冠状溝に包皮輪が絞扼をきたし、リンパ浮腫を起こしている嵌頓包茎の状態


絞扼部位に27G針で2%カルボカインによる局所麻酔を注入しているところ


絞扼部位の繊維輪を尖刃メスにて縦切開し、包皮輪を徐々に開大しているところ


絞扼は解除され、切開部分の止血をバイポーラー電気メスにて止血をしているところ


切開した断端を5-0バイクリル吸収糸にて縫合しているところ


縫合が完了したところ


まだ包皮の浮腫みは残っていますが、嵌頓は解除され包皮は元に戻っています。


創部に包帯を巻いて終了。

嵌頓包茎は、年齢に関わらず包皮輪が狭いのに包皮を翻転してしまい、すぐに元に戻さない事で包皮が冠状溝で締め付けをきたして(絞扼)、リンパ浮腫となり起こる現象です。何らかの要因(包皮を剥いて亀頭を洗おうとしたら戻らなくなった、マスターベーションをしている最中に剥けてしまい、戻らなくなったなど)で起こります。無意識な状態で勝手に狭い包皮輪が冠状溝まで翻転することはないので、意図的な操作の後に起こってしまいます。
もし万が一、嵌頓包茎となってしまった場合にはなるべく時間をおかずにお近くの泌尿器科を受診してくださいね。