日常診療で比較的よく遭遇する尖圭コンジローマについて、わかりやすく解説しています。 日常診療で比較的よく遭遇する尖圭コンジローマについて、わかりやすく解説しています。

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尖圭コンジローマ

尖圭コンジローマは比較的日常診療で遭遇する機会の多い皮膚病変です。
原因はウイルスで、HPV(ヒト乳頭腫ウイルス)であり、特に尖圭コンジローマにおいてはHPV6/11型が原因とされています。HPVは、女性の子宮頸がん発症因子としても有名で、女性においては性交渉を経験する前に是非とも子宮頸がんワクチンを投与することを推奨します。幸い、HPV6/11型は子宮頸がん発症リスクにおいては低リスク型に属しているようですが、それでもやはりワクチン接種はしておいたほうが良いでしょう。
2002年に行われた日本の調査(日本性感染症学会:日性感染症会誌27;69.2016より引用)では、性感染症の中では10万人・年対罹患率が男性29.9、女性32.5で、他のクラミジアや淋菌感染症、性器ヘルペスよりは低い罹患率であった様です。年齢別の罹患数は男性20-39歳、女性15-29歳が最も多かったようで、性的活動の多い年代での罹患数が高い様でした。ただし、これら性感染症は単独だけとは限らず、複数の性感染症が合併することも日常診療においては多数見受けられるため、尖圭コンジローマを発見した場合には、淋菌、クラミジア、梅毒、マイコプラズマ、ウレアプラズマなども同時に精査しておくことをお勧めします。その際には、接触のあった異性のパートナーにもお伝えし、同時に精査加療しないと後にピンポン感染を引き起こすことになりかねません。
治療法には、まずは保存的加療から開始し、一般的にはイミキモドクリーム(ベセルナクリーム)を塗布し、約2-4週間使用してみて反応をみます。全く反応のない場合には、液体窒素による凍結療法や、外科的切除および電気焼却術を行う事になります。
当院で行った、尖圭コンジローマの外科的切除および電気焼却術をお示しします。

【50歳代の男性】

陰茎根部に複数個存在する疣贅(尖圭コンジローマ)



局所麻酔を患部および周囲に注入しています。


病変部位を1つずつ丁寧に鑷子で把持し、眼科用尖刀で切除しているところ。


切除後の病変部位を止血しながら電気焼却し、同時にウイルスの根絶を目的としています。

【20歳代男性】

包皮に存在する疣贅(一見孤立性かと思われましたが、拡大してみると周囲に散在しています)


鋭的に切除後、同じく電気焼却し、止血とウイルスの根絶を行っているところ。

尖圭コンジローマは、肉眼的に確認できる部位しか基本塗布薬にしろ、切除、電気焼却術にしろ、手を加えることが出来ないため、目に見えていない他の部位にすでにウイルスが散布されていれば、今度は治療した箇所以外からの再発は防ぎようがないことになります。それゆえ、尖圭コンジローマは治療後の3か月以内に25%が再発するとの報告があり、患者さんには再発リスクについて詳細に説明した上で患者さんのアドヒアランスに基づき治療方針を検討する事になります。とはいっても、何もしなければ、増大傾向をきたし、性交渉の度にパートナーへのウイルス散布を引き起こすこととなり、これは公害以外の何ものでもありません。
おかしいな、と思ったら、お近くの皮膚科もしくは泌尿器科で相談してみてくださいね。