陰茎、包皮の疾患に対する病態、原因、治療についてわかりやすく説明します。 陰茎、包皮の疾患に対する病態、原因、治療についてわかりやすく説明します。

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陰茎、包皮の疾患

泌尿器科と言えば、やはり誰しもがお下のお悩みを連想されるかと思います。
そこで、今回は、男性の陰茎、包皮の疾患で日常当クリニックで多く見かける疾患を挙げてみたいと思います。
まずは、広く知られている嵌頓包茎です。包皮が水膨れの様になった!と焦った様子で患者さんが来院されることが多いです。御覧の通り、単なるむくみではなく、包皮が翻転した後、狭い包皮輪が環状溝(亀頭直下)を締め付けることにより生じるリンパ液の還流障害であるリンパ浮腫、これが今回の嵌頓包茎です。


エリマキトカゲの様にきゅっと締め付けられ狭くなった包皮輪の直上に、包皮のリンパ浮腫が見られます。


嵌頓包茎は自然になることはなく、ほとんどが自慰行為(マスターベーション)による外的な力が働いて起こる現象です。用手的に包皮を翻転し直して、元通りにしました。


嵌頓包茎整復術後の様子です。

根本的治療(再発防止)は包茎手術(環状切除術)になります。用手的に戻らない場合は緊急で局所麻酔下に背面切開術を行い、狭い包皮輪の緊張を解きます。
次は、性器ヘルペスです。性交渉後1週間してから、亀頭部分の疼痛と排尿時痛を主訴に来院されました。亀頭部分と包皮にかけて、水疱形成および包皮のびらん形成が散在しています。


亀頭部分に存在する水疱形成と亀頭、包皮に散在する表皮びらん形成の様子

見るからに痛そうな性器ヘルペスの状態です。排尿時痛については、淋菌、クラミジアともにPCR陰性、両側鼠径部リンパ節腫脹もあったため、梅毒検査も行いましたが陰性でした。抗ウイルス薬の服用と抗炎症薬の軟膏塗布にて、4-5日で緩解しました。


きれいになった亀頭および包皮の様子

性器ヘルペスでは時折排尿時痛の訴えも併存していることもありますが、神経に潜んでいるウイルスであるため、尿道粘膜の知覚も過敏になっているためと考えられます。
ラストは尖圭コンジローマです。今回は今まで見た中でもっとも衝撃的であったため、ご紹介します。通常尖圭コンジローマはHPV(ヒトパピローマウイルス)による感染が原因で、今回の様に鶏のトサカの様な形態を示すものと、ほくろがもう少し隆起したような扁平化した形態とがあります。


鶏のトサカの様な形態をしている尖圭コンジローマ

抗ウイルス薬の塗布を薬1か月使用し、きれいになりました。この方は性風俗店を利用した経緯があったため、他の性病検査も行ったところ、マイコプラズマとウレアプラズマにも罹患しており、抗生剤の内服も処方し、こちらも完治しました。あ、HPVは女性の子宮頸がんのリスクファクターとしても有名です。男性諸君、大切な女性に迷惑のかからぬ様、ご自身の陰部もしっかり診察してみてくださいね。


尖圭コンジローマは抗ウイルス薬の効果で、見事に消失しました。

他にも梅毒感染による初期硬結や、痛みを伴わない潰瘍形成、糖尿病を既往に持つ患者さんに特徴的な真菌感染による線状に縦裂した包皮炎などなど、亀頭や包皮の疾患は数多くあります。最近、この真菌感染症による特徴的な包皮炎は2型糖尿病治療薬であるSGLT2阻害剤を服用されている方に多く見受けられる傾向にあります。服薬を中止して他剤に変更していただくよう主治医の先生にお願いしても、なかなか受け入れてもらえないことがあり、悩みの種となっております。
私も、勤務医時代にはほとんどお目にかかったことのない陰部の皮膚疾患を開業してからたくさん経験し、勉強させていただいております。医師にとって、患者さんは教科書です。日々の診療でお目にかかる患者さんから得られる経験は、あらたな教科書の1ページとなり、どんどん分厚い教科書へと変革しております。患者さんにはいつも感謝しております。