原発性副甲状腺機能亢進症と尿路結石 原発性副甲状腺機能亢進症と尿路結石

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原発性副甲状腺機能亢進症

今年も寒い冬がやっと明けて、だんだんと暖かい気候になってきましたね。今の時期は花粉症で悩まされている方も多いことと思います。もう少し気温が高くなると、夏が旬の疾患である尿路結石の患者さんが急激に増加し始めます。なぜ、気温が上昇すると尿路結石の発症が増加するかと言えば、単純に不感蒸泄量(肺からの呼吸や皮膚からの呼吸で排出される水分量)が多くなり、そこに感蒸泄(発汗)も伴って相対的に血管内が脱水傾向に陥ることで、結石の成分であるCaや尿酸、シュウ酸、リン酸等が溶解濃度が限界点に達する過飽和状態となり、結晶化して析出し始めるからなんです。しかし、脱水による過飽和状態にならなくても、血中のCa濃度が上昇すれば、同じように尿中Ca排泄量が多くなり、結石形成を助長させます。今回はそんなCa濃度を上昇させる疾患の一つである、原発性副甲状腺機能亢進症が背景にあった、尿管結石疝痛発作で受診された2例をご紹介いたします。
1例目は50歳台女性で、左背部痛を主訴に当院受診されました。エコー、x-p、CT上から左腎結石と左尿管結石が認められ、その後自然排石。その半年後にまた前回認められた左腎結石が左尿管内に下降してきたために再び左背部痛で当院受診され、その後自然排石。そして、さらにその3か月後に新たに出現した左尿管結石による左背部痛を主訴に当院受診され、その後自然排石。



検診では脂質代謝の異常はあるとのこと。確かに、尿路結石発症のリスクファクターとしては、肥満が挙げられていますが、この方はBMI21.4とむしろやせ型です。あまりにも短期間で再発を繰り返されているため、Ca、P(リン)を含めた血液検査を施行したところ・・・・。Ca11.3mg/dl(正常値8.4-10.4)、P2.6mg/dl(2.5-4.5)と高Ca血症を呈していたため、副甲状腺ホルモンである、intact-PTHを測定したところ、94pg/ml(10-65)と上昇しておりました。
原発性副甲状腺機能亢進症疑いにて、近隣施設へご紹介したところ、副甲状腺シンチグラフィーで4腺ある副甲状腺のうち、左上腺に集積が認められておりました。


この部位が責任病変と診断され、後日この部位を摘除し、病理学的にも腺腫の診断であったとのことでした。その後直近の値ではCa9.5mg/ml、P3.5mg/ml、intact-PTH53pg/mlまで下降し、安定しております。
2例目は40歳台男性で、肉眼的血尿と右背部痛を主訴に当院受診されました。エコー、x-p上から両側腎結石および右尿管結石が認められました。



この方はもともと検診でも腎結石を指摘されており、また、多発性に尿路結石を認めていたため、Ca、P含め採血施行したところ、Ca10.6mg/ml(8.4-10.4)、p2.2mg/ml(2.5-4.5)と軽度の高Ca血症と低P血症を認めていました。そこで、intact-PTHを測定したところ、132pg/ml(10-65)と有意に上昇していたため、近隣施設へご紹介したところ、副甲状腺シンチグラフィーで副甲状腺左下腺に集積が認められたため、後日摘除し、病理学的にも腺腫の診断であったとのことでした。



術後一過性に低Ca血症によるテタニー症状(手のこわばりやしびれetc)が出現したことからも、責任病変として間違いなかったと考えられます。この方もBMI19.4とやせ型で肥満の無い方でした。術後の直近での値では、Ca9.5mg/dl、P2.0mg/dl、intact-PTH44pg/mlまで是正されております。
一般的に甲状腺はバセドウ病や橋本病などで有名で、結構著名人などでも病状を明かされているケースが見られますが、今回の副甲状腺についてはあまり知られていないかと思い、ご紹介しました。副甲状腺ホルモンはCaとPのバランスを整える上で重要な役割を果たしております。今回の様に副甲状腺の機能が亢進することでCaとPのバランスが崩れると、尿路結石の発症に結びつくこともあり、たかが尿路結石とたかをくくって、食生活を気を付けましょう、飲水摂取励行!とばかりおんなじ文言で指導していても、同じことを繰り返してしまうケースもあります。実は背景に根本となる原疾患が潜んでいることも念頭に置いて、これからの季節に増えてくる尿路結石患者さんを診療していかなければなりませんね。あ、ちなみに原発性に対し、続発性(二次性)副甲状腺機能亢進症という病態もあります。代表的なものに慢性腎不全や血液透析患者さんに見られる低Ca、高P血症に対し、代償しようとして副甲状腺が頑張ってしまう状態です。足りないCaを骨から引っ張って来ようとするので、骨粗しょう症に拍車がかかってしまいます。
いやー、尿路結石がまさか、内分泌疾患と関連があるなんて、みなさんご存知なかったのではないでしょうか?尿管結石の疝痛発作で病院やクリニックにかかった際には、一度Ca、Pも採血項目に入れてみてもらってはいかがでしょうか?