性行為感染症は、性交渉のある人であれば誰もが感染する可能性がある。気になっていた症状が、実は性行為感染症によるものだったということもあるのだ。「すがわら泌尿器科・内科」の菅原草院長によると、泌尿器科においても、淋菌やクラミジアなどが原因で起こる性行為感染症の治療を行うことが少なくないそうだ。性行為感染症は合併症状が起こりやすく、感染を広げないためにも早期に治療を行うべきだが、自分で自覚がないと、なかなか気づけない部分もある。そこで今回は、性行為感染症の基本的な知識と、検査や治療について、なかなか聞けないけれども知っておきたいポイントについてまとめた。
目次
性行為感染症の早期発見・治療には、自分自身の心がけや自覚が重要
- Q泌尿器科ではどのような性行為感染症を診ているのですか?
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A
性行為感染症にはさまざまな症状があり、男性も女性も感染する可能性があります。泌尿器科においては、男性に特化して診ることが多いですね。代表的な病気としては、淋菌による「淋菌性尿道炎」と、クラミジアによる「クラミジア尿道炎」が挙げられ、いずれも排尿時に痛みがあります。また、性行為感染症は合併症状が起こりやすいのも特徴です。診察において、尿道炎の症状以外にも気になる所見が見られる場合もあり、その一つが梅毒によるものです。梅毒の場合、初期は痛みがないことも多いのですが、鼠径部のリンパ節が腫れていたり、陰部に特徴的なしこりが見られるなどの特徴があります。
- Q受診のタイミングや診察について教えてください。
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A
先ほどお伝えした尿道炎の症状、排尿時の痛みや違和感があって相談に来る方が多いです。ただし、尿道炎といっても性行為感染症が原因の場合と、そうではない場合がありますので、症状が出た経緯を詳しくお聞きします。最近、オーラルセックスを含む異性との性交渉があったかどうかや、その時期は重要な要素となります。菌の潜伏期間は1〜2週間ですので、該当する場合には、代表的な感染菌、淋菌とクラミジアの検査を行います。補足として、淋菌に感染している場合は痛みや膿が出るなど顕著な症状が多いのですが、クラミジアは感染していても無症状なことがあり、受診に至らない方もいらっしゃると思います。
- Qどのような検査や治療をするのでしょうか。
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A
性行為感染症の検査は、PCR法という尿検査が基本です。梅毒の可能性がある場合は、併せて血液検査も行います。いずれの症状も、陽性だった場合は抗生物質の服用による治療をスタートします。1週間後に再検査をし、陰性になっていれば治療は完了です。ただし、近年は耐性菌が多くなっていますので、1週間薬を飲んでも変化が見られない場合は抗生物質の種類を変更し、さらに1週間後に再検査という流れで、陰性になるまで継続していきます。症状によっては点滴や筋肉注射で抗生物質を投与する方法もありますが、ほとんどのケースでは飲み薬で対応でき、患者さんも治療への抵抗感は少ないのではないでしょうか。
- Q近年、病気の変化を感じることはありますか?
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A
梅毒の感染者が増えています。感染症発生動向調査によると、2012年には857例だったのが、2017年には5819例にまで増加しています。また、女性の割合が多くなってきていますね。痛みのないしこりや腫瘍が特徴なので、心あたりがあればすぐに受診してください。梅毒が陽性の場合はHIVが合併しやすいため、HIVの検査も受けたほうがいいです。また、尿道炎の症状で検査した結果、淋菌やクラミジアには感染していなかった方、もしくは、すでに尿道炎の治療で抗生物質を飲んでいるけれども治らない方は、ウレアプラズマ、マイコプラズマによる感染症の可能性があります。ただし、これらの病気の検査は現状、保険診療の範囲外です。
- Q日常生活で気にすべき点はありますか?
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A
性行為感染症は、感染のリスクをいかに減らしていくか、ということが重要です。そのためには自分自身で意識する必要がありますし、心あたりがあれば検査をしましょうということですね。検査のきっかけとしては、お子さまを希望されてご夫婦で検査を受けたり、あるいは女性、男性どちらかが陽性でパートナーも検査を勧められ、検査をしたら感染がわかったというケースもあります。特にクラミジアに関しては、先ほども申し上げたように、男女ともに無症状のことも多いのですが、感染している状態では、女性の不妊の原因となることもあります。女性の場合は、おりものが多かったり膿が混じるなど気になる点があれば、婦人科を受診しましょう。